ILCJ古閑会長インタビュー (Part2)

当会会長を務める古閑裕は、約30年前にKOGA RECORDSを発足したレーベルオーナー。
さらに、KEYTALKなどが所属するマネジメント事務所、2軒のレコーディングスタジオ、飲食店の経営にも携わり、VENUS PETER、ROCKET Kのベーシストとしても活動しています。古閑のこれまでの足跡、ILCJが果たす役割について、話を伺いました。
(撮影協力:こがみ / 取材・文:野本由起)

二次使用料の分配のほか、海外進出の支援や情報共有も

──2003年に発足したILCJは、レコード製作者が持つ著作隣接権の再分配を主に行う団体です。インディーズレーベルがILCJに加盟すると、この団体を通じて放送の二次使用料を受け取ることができます。ILCJは、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

インディーズの流通を手がけるダイキサウンドの方から、「インディーズレーベルも二次使用料を受け取ることができるけれど、再分配する団体が存在しない。今からでも作ったほうがいいんじゃない?」と言われたんです。ただ、最初は僕も「二次使用料って何?」って、よくわからない状態でした。

メジャーレーベルはレコード協会の会員になっているので、協会を通して二次使用料が分配されますけど、インディーズはレコード協会になかなか入れません。それならインディーズバージョンの協会を作ろうというのがILCJでした。初代会長はアミューズ元会長の山本久さん。僕は、顔の広さを買われて2代目会長になりました(笑)。

──ILCJの活動内容を教えてください。

放送などで音源が使用された場合の二次使用料の分配のほかに、音楽ビジネスに関する情報共有や海外進出したいレーベルやアーティストの支援活動も行っています。具体的に言うと、アメリカ・テキサス州オースティンで毎年行われるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)への出演サポート、経済産業省が開催しているTIMM(東京国際ミュージック・マーケット)への参加などですね。TIMMでは、日本の音楽を自国で展開したい海外のバイヤーと商談して、アーティストにつなぐ橋渡し役も果たしています。韓国や台湾でも同じようなショーケースがあるので、視察に行ったり、情報共有したりすることもありますね。少しでも海外との交流を求めるなら、ILCJに加盟するとメリットが大きいんじゃないでしょうか。

──現在の加盟団体は?

約70社です。月に一度は理事会を開き、年に一度の総会ではその年の活動報告をしています。

──自分にも著作隣接権が与えられていると気づいていないアーティストやレーベルも少なくないように思います。

だからこそ、ILCJが啓蒙していきたいんですよね。僕もILCJ会長として、知り合いのアーティストやレーベルの人と話す時には「どこの団体に入ってます?」「二次使用料、どうしてますか?」と聞くようにしてます。

“好き”という気持ちを貫き、楽しく活動したい

──ILCJ会長としての活動には、どんなやりがいを感じていますか?

やっぱり海外の情報がわかるとワクワクしますね。先日も、理事会のメンバー数人で韓国のMU:CON(ソウル国際ミュージック・フェア)に視察に行ってきたんですよ。新しいものに触れるとドキドキするし、自分のレーベルのアーティストにもフィードバックできそうなことがいろいろあるなと思いました。

──ILCJの会長として、そして古閑さん個人としての目標や野望を教えてください。

せっかく会長になったので、横のつながりをもっと広げて、みんなが音楽でご飯を食べられるような土壌を作りたいですね。今はCDが売れない時代だし、配信でバズるアーティストはいても音楽だけじゃ食えない人も多いじゃないですか。真ん中がいなくて、両極端。TikTokで音楽が使われても、音楽がメインじゃなくてダンス動画のBGMで使われるだけ。それもいいですけど、やっぱり昔みたいに音楽を聴いて「かっこいいな」と憧れたいし、そういうアーティストを増やしたい。下北沢から、K.O.G.A Recordsから、ILCJから発信できたらいいですよね。

──最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

僕の座右の銘は「好きこそ物の上手なれ」。音楽が好きだからレーベルを作ったし、酒好きなんで飲食店も作りました。億万長者になるでも、ライブハウスを建てるでも、夢はいろいろあっていい。好きという気持ちを初志貫徹しつつ、楽しくやりましょう。