サインポールレコーズのレーベルオーナーであり、ILCJ事務局次長を務める宮城島隆弘さん。放送二次使用料の徴収・分配、会員とのコミュニケーション、他団体との会合など、ILCJの実務を担っています。ILCJに入会した経緯、同会が果たす役割についてお話を伺いました。
(撮影協力:TOKYO SOUND STUDIO / 取材・文:野本由起)

横のつながりを求めてILCJに入会
──ILCJに入会したきっかけを教えてください。
正直なところ、著作隣接権などの権利についてはまったく知らなくて。単純に横のつながりを求めて、2010年に入会しました。
──実際、つながりは広がりましたか?
僕が入会した頃は、元アミューズ代表取締役の山本久さんが会長で、イーストワークスエンタテインメント代表の守崎幸夫さん、ハイウェーブの比嘉瑩さんなど錚々たる皆さんが理事を務めていました。オブザーバーのような形で理事会に呼ばれたものの、最初はなかなか話せませんでしたね。権利関係のことも業界事情もわからなかったので、話している内容もあまり理解できなかったんです。
ただ、現会長の古閑裕さんに代替わりしてからは、僕も事務局次長になり、いろいろな人と話す機会が増えました。今では何でも相談しやすいです。
──事務局次長は、どのような役割を担っているのでしょうか。
事務全般です。放送二次使用料の徴収・分配の手続きはもちろん、会員とのやり取り、他団体との交渉や会議も担当しています。大変ではありますが、徴収・分配は年2回ですし、困った時は事務局長の山下さん、副会長理事の小川さんなどにも助けてもらっています。
──ILCJ事務局次長として、文化庁の委託事業にも関わっていたそうです。こちらについて教えてください。
数年前、文化庁が「コンテンツの権利情報集約化等に向けた実証事業」を実施し、音楽に関する権利情報を集約し、一括検索できるシステムを構築しようという動きがありました。委託事業が終わった現在は、一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会(MINC)が引き継ぎ、楽曲の権利情報のデータベースと検索サイト「音楽権利情報検索ナビ」を提供しています。僕はMINCの理事も兼任しているというかたちです。
楽曲のデータや権利関係は複雑で、配信するにも煩雑な手続きが必要です。例えば、レーベルが原盤を作り、CDを作って配信しようとした場合、まずディストリビューターやジャパンミュージックデータにメタデータを渡します。さらに、配信プラットフォームにもそれぞれデータを渡さなければならないんですよね。同じようなことを何度もやらなければならないので、人手が少ないインディーズレーベルにとっては大きな負担になっています。理想を言えば、すべて統一したいところですが、なかなかそうもいかなくて。ですが、できるだけスムーズにいくよう整備を進めて進めたいと思っているところです。
それに加えて放送二次使用料の分配も、2025年からはインディーも完全放送実績分配に切り替わりました。そのデータ収集や付き合わせも行なっています。新しいシステムを導入したので、作業の効率化を図りつつ、できるだけ事務作業が属人化しないようにしたいですね。

ILCJに入ると、レーベルや事務所、音楽出版社とのつながりが生まれる
──ILCJでは、放送二次使用料の徴収・分配だけでなく、アーティストの海外進出を支援したり、セミナーを実施したりとさまざまな活動を行なっています。こういった活動の意義についてご意見を聞かせてください。
僕が入会した頃から、ILCJは海外展開を積極的に支援して、独自性を打ち出していました。例えばアメリカ・テキサス州で開催される「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」の出演に助成金を出したり、最近では韓国の「MU:CON(ミューコン)」を視察したり、海外の在日大使館からショーケースに招待されて情報共有したり。インディーの業界団体が集まって作った一般社団法人Independent Music Coalition Japan(IMCJ)からも海外の情報が入ってくるので、ILCJの加入者会員に展開するようにしています。こうした海外志向が他団体との差別化にもつながっているので、これからも力を入れていきたいですね。
また、コロナ禍をきっかけに著作権講座のようなセミナー参加費にも助成金を出せるようにしました。最近は、AIと著作権についても話題になっていますよね。使い道も金額もある程度限られていますが、気軽に使って知見を広げてもらえたらと思います。
──インディーズアーティストの中には、著作隣接権についてご存じない方、放送二次使用料を受け取る権利があるのに行使していない方も多いのではないかと思います。こうした現状、ILCJの存在意義についてはどう感じていますか?
僕自身も、ILCJに入会するまでは権利について知りませんでした。毎年、分配先不明の楽曲が何万とあって、権利があるのに分配されていないアーティストもたくさんいます。ILCJに入会すれば、こうした放送二次使用料が入るのでぜひ入ってほしいですね。
横のつながりができるのも、ILCJのメリットですね。他のインディーズレーベルや音楽事務所、音楽出版社も加入しているので、そういった皆さんにが気軽に相談できる場にもなっています。インディーズレーベルは少人数で運営するので、行き詰まってしまうことも多くて。そういう時に、相談できる人がいると思うだけで気が楽ですね。
──月に一度、理事会も開いているそうです。どういった話し合いを行なっているのでしょうか。
最近、事務局長の山下さんの提案で、「SXSW」でイベントを組み、出演アーティストを募集し、助成金を支給する企画を実施しました。こうした企画の提案・実現について話し合うこともありますし、新規会員の入会審査も行なっています。
──入会を希望する団体・アーティストは増えているのでしょうか。
今お話した「SXSW」出演者募集の効果が大きくて、ここ数ヵ月は新規入会希望が増えています。それ以前から、年に5、6件は入会希望がありますね。著作隣接権や放送二次使用料について、世間の認知度が高まっているのかもしれません。
──今後、ILCJで実現したいこと、宮城島さんの個人的な目標を教えてください。
まずはやるべきことをちゃんとやる。そのうえで、著作隣接権の啓蒙活動にも力を入れたいですね。ILCJとしては、会員の皆さんと、そして他団体とも仲良くやっていきたいです。助成金だけでなく、法律相談のようなことも含めて、互助会的な機能があればいいなと思っています。
あとは、先ほどお話したようにデータ基盤の整備を進めて、業界のフォーマットを統一したいです。MINCにメタデータを登録すれば、いつでも必要な情報を引き出せるようにしたい。今はフォーマットが少しずつ違うので統一して、誰もが便利に使えるようになったらいいと思います。