「アーティストに著作隣接権などの権利を広めたい」ILCJ事務局長・山下智インタビュー
ミュージシャンとして国内外で活躍しながら、マネジメントやレーベル業、レコーディングスタジオや飲食店などの事業も手掛けるILCJ事務局長・山下智さん。これまでの道におり、アーティスト視点で見たILCJの意義について、語っていただきました。
(撮影協力:STUDIO JOURNEY / 取材・文:野本由起)
インディーズ同士でつながれるのが心強い
──ILCJの事務局長を務めていますが、どのような役割を担っているのでしょうか。
実務は事務局次長の宮城島さんがやっていらっしゃるので、僕はほとんど何もしていないんです。ただ、アーティストの気持ちはわかるので、そういった面で関わりたいとは思っています。
例えば、アメリカ・テキサス州で開催される「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に出演したいアーティストを募集する企画を提案したのもその一環です。「ミュージシャンだったら、きっとこういう支援はうれしいだろう」と想像しやすいので、ILCJとしてサポートできたらと思っています。
──ILCJでは放送二次使用料等の分配を行なっています。こうした活動にどのような意義を感じていますか?
アーティストがメジャーレーベルと契約しても、配信で得られる原盤印税は微々たるもの。「それはおかしい」と思いながら、アーティスト側からレコード会社に契約を見直してほしいとはなかなか言えません。
ですが、こうした実情をきっかけに、まず「原盤印税って何だろう」「放送二次使用料とは、著作隣接権とは何なのか」と疑問が生まれると思うんです。まずはアーティストが自分の権利を知ることに意味がありますし、普及活動をサポートすることがILCJの意義だと思います。
──ILCJの活動を通して、山下さん自身はどのような楽しさややりがいを感じていますか?
インディーズレーベルを運営する方がこんなにいるんだという心強さを感じます。どこにも属さず、ひとりでレーベルを運営していたら不安も大きいと思うんです。その点、ILCJのような団体に所属すれば、このやり方でいいのか、どうすれば海外に配信できるのかといった情報も共有できます。
それに、古閑会長を筆頭に、インディーズの反骨精神やプライドを皆さんお持ちなんですよね。「メジャーには飲み込まれないぞ」という気概を感じますし、仲間として心強いです。

アーティストの気持ちに寄り添い、海外進出を支援
──先ほど「SXSW」のお話がありましたが、ILCJでは海外進出するアーティストをサポートしたり、助成金を出したりしています。こうした活動についても、ご意見をお聞かせください。
僕はミュージシャンとして助成金を受ける側の立場になることも多いのですが、実際とても助かるんですよね。個人的には、みんなもっと海外に行ったらいいなと思うんです。もちろん言葉は通じないし、マナーも違うし、今は円安ですから金銭的にも大変です。それでも、日本にいるだけではわからない貴重な体験ができるのは間違いありません。今後の音楽人生を考えた時に、海外に行くのはすごく大事だと思いますね。
今はストリーミングサービスで世界に楽曲を配信できるので、例えば「韓国でよく聴かれているな」という曲が1曲でもあるなら行ってみてもいいんじゃないでしょうか。その際、ILCJの助成金を使ってもらうのも、全然ありだと思います。もちろん助成金を得るにはレポートを書いていただきますが、それも「このアーティストがこういうイベントに出演したら成功した」「こういうケースはうまくいかない」とILCJ全体で共有し、次に活かすため。ぜひチャレンジしてもらいたいですね。
──山下さんも海外で活躍していますが、どんなところに魅力を感じますか?
ミュージシャンに対するリスペクトを感じるんですよね。シンプルに「楽器を演奏できる、かっこいい、すごい」みたいな(笑)。それに、周りがどう言おうと流されない。「私は好きだから応援します」という人が、海外には多い印象です。
印象的だったのは、ニュージーランドのオークランドでライブをした時のことです。ROUTE14bandは、毎年ニュージーランドの地方のジャズフェスに出演していますが、オークランドは初めて。それでも、SNS広告を出し、現地のSNSで告知しただけで、多くのお客さんが集まりました。「音楽に興味がある人がこんなにいるんだ!」とシンプルにうれしかったですね。
──山下さん個人として、そしてILCJの事務局長としての今後の展望をお聞かせください。
個人的にはグラミー賞を獲りたいですね。2025年はディレクターとしてT-SQUAREのアルバム1枚とROUTE14bandではミュージシャンとして2曲エントリーしましたが、ノミネートされなかったので来年以降もチャレンジしたいです。
ILCJ事務局長としては、アーティストに著作隣接権などの権利を広めたいです。ILCJにも、レーベルだけでなくアーティストにもっと入会してほしい。みんながもらうべきお金をもらえたら、ミュージシャンだけで食べていける人が増えるかもしれないし、音楽産業がもっと豊かになるかもしれません。
そのためにも、できるだけわかりやすく権利について説明し、広く伝えていきたいです。ILCJに入会しなくても「これってどういうことですか?」と気軽に問い合わせいただけたらうれしいです。